日本では難なく使いこなせているコンピューターでの通信も、いざ海外に出て行おうとすると事情は違って来ます。 例えB5型の軽いノート型パソコンでも海外旅行に持っていくとなれば何かと大変です。ここでは、筆者の経験をもとに、アジアでラップトップコンピューターを使って通信を試みる人を対象に書きました。(2002年5月改訂) |
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1. 目的を考える まず、第一にノートパソコンを持って海外に出ることが本当に必要なのかどうか考えて欲しい。荷物が増えるとか、故障の心配などもあるがそれ以上にセキュリティの問題がある。観光旅行に出かけるとしよう。旅に必要なものは何だろう。着替えの服はともかくとして、貴重品としてはパスポート、現金、カメラなど。市内観光に出るとして余分な現金や場合によってはパスポートもホテルのセキュリティボックスに預けることが出来る。カメラはもちろん観光に持っていく。しかし、ノートパソコンはセキュリティボックスに入らない。フロントに預けるのも何なのでホテルの部屋に置いていくことになる。そうすると市内観光に出かけている間中、部屋から紛失していないかどうか気になって十分に楽しむことが出来ないし、かと言って鞄に入れて持ち歩いても、ひったくりや置き引きに遭う危険性もある。 それでもパソコンを持っていこうとするには相当の理由があるはず。 1) NEWSページなどある特定のページに毎日アクセスして情報を収集している。 上に挙げた6つのケースの中で1)と6)に関しては行き先にもよるがインターネット・カフェを利用する手がある。4)に関しては書くものの性質による。パソコンに入っている情報を利用しながら書く場合は必携だが、インターネットで情報を集めながら書く場合はカフェの利用で足りる場合もある。 <インターネットカフェの利用>
海外にPCを持って行くにはそれなりの事情がある。ホームページで記録を公開しているとか、仕事でどうしても必要とか、PC中毒、ネット中毒とか。筆者の見解として、荷物は軽いに越したことはないので、メールとホームページの更新だけならモバイル専用機器でも間に合う。しかし、仕事で使う場合はフルスペックのPCをお勧めする。最近、B5型でCD内蔵、しかも薄くて軽い機種がNECやシャープから出ている。お金に余裕があれば、そちらをお勧めする。 <長期滞在者> 筆者は、海外に長期滞在する事と、ホームページを管理していること、そして仕事の大半がパソコンを使って行っていることを考慮して、IBM ThinkPad 380XD を選んだ。重量が3.3kgと重いが、液晶モニターは12.1インチTFTで長時間作業をしていても疲れない。この機種はWindows95モデルなので既に生産がうち切られている。そのためアウトレット扱い。Pentium II 266MHzであるにも関わらず、税込みで23万円程度で購入出来た。 もう一つ、IBM を選んだ理由としてはダッカにサービスセンターがあること。多分、修理などでは実際の用に立たないかも知れないが、例えば、ACアダプターのコードを紛失した場合とか、そんなちょっとしたことでもパソコンが使えなくなるわけだから、サービスセンターがあれば心強い。従って、ノート型PCを購入する場合、現地にサービスセンターがあるかも重要な判断基準の一つとなるだろう。 留学や仕事で海外に長期滞在する場合、現地でPCを購入する人が多いだろう。その場合、英語のOSに日本語キットを導入して使うことが出来る。ただし、日本語は2ビットで、英語は1ビットであることから、そうした事に対応していないソフトもある。読めても書けないばあいもあるので注意が必要。 ハードディスクをパーティションで分割して、一方に英語、もう一方に日本語OSをインストールすることも可能だ。日本からソフトを持っていけば問題なく使えるだろう。また、英語のOSに日本語のデバイスドライバーを組み入れることは出来ないが、その逆はほぼ問題ない。従って、赴任先でプリンターを購入し、日本語OSにドライバをインストールし、使用フォントがTru Fontであれば、殆どは問題なく印刷する。 2. 周辺機器 以下は、PC以外で必要と考えて筆者が購入したものについて説明する。購入する場合は、是非とも将来の必要も考えて選んで欲しい。資金的に無理な場合は仕方ないにしても、世界中どこでも使用可能な環境を構築することが基本だとおもう。 <モデム> モデムは TDK Global Freedom5660。このモデムカードは世界60カ国の電話回線での使用を保証している。また、アメリカやヨーロッパ、香港などで普及しているPCS,GSMおよびアナログの携帯電話に接続して使える。残念ながら日本国内の携帯やPHSには対応していないが。そのためか、ちょっと値段が張る。通常、2万5千円〜3万円程度で売っている。 最近は国際保証がないモデムカードだと1万円以下でも売っている。 実は、ThinkPad380DXはモデムが内蔵されていなかったのだ。しかし、モデムが内蔵されていてもそれが"Global Class"という表記がない場合、行き先の国で使用可能かどうか分からないので、その場合は用意していった方がいいかも知れない。また、現地でモデムを購入するのも一つの手だ。 <モデムキーパー> Modem Keeper Pro 約3,500円 【過電流】 通常、モデムはアナログ回線対応だが、ホテルなどではデジタル回線(90mA)使用の場合があり、過電流によってモデムの回路が破壊される恐れがある。事前にチェックしよう。 【極性反転】 実は、バンコクのホテルやカルカッタでの友人宅、そしてダッカでも極性が反転していた。殆どの場合、問題なく接続できる。しかし、接続できない場合は極性を再び反転させるカプラーを使うか、モデムキーパーを使用する。 <テレカプラー> 公衆電話や安ホテルの電話、そして一般家庭などでは電話の接続がジャックでない場合がある。その場合、絶対必要なのがテレカプラー。使い方は簡単。これは、受話器から音声をモデムに伝えるマイクとスピーカーの役目を担っている。初期のカプラーと言えばモデム機能が内蔵されていたと思うが、現在のはモデム機能はない。しかも、値段が1万6千円程度する(本当に必要となるか分からなかったので知人から借りた)。通信を行う場所が、相手先のオフィスなどカプラーがいらないことがはっきりしていれば持っていく必要はないだろう。 <変圧器及び安定器>必需品 日本の電圧は100ボルト、アメリカが110ボルトだが他の国では220〜240ボルト。新規にPCを購入するにしても、既に国際対応(電圧だけ)のPCを持っているにしても、変圧器は絶対必要。国内で販売されている100〜240ボルト対応のアダプタ付属機種でも、実はアダプタからコンセントまでの線は120ボルトまでしか対応していない。これは、コンセントの差込形状のためと思われる。そのまま、差込プラグだけ付けて使用すると、発火の恐れがある。 PC以外に電化製品を一切持っていかない、しかも、電圧が安定した地域であるということであれば、コードを交換するだけで良い。しかし、他にノート型のプリンタとかCDプレイヤーとかなんだかんだ持って行くなら、変圧器一つ購入すれば、後はアダプタとかコードを買い換える必要がないので結果的に安上がり。 東京電力などの電力会社が宣伝では、日本ほど良質の電気を供給している国はない、という。電気が良質とは、危険な原発で作られていないとか、太陽エネルギーとかそう言うこととは一切関係ない。要は電圧が一定に保たれているということだ。インド、バングラデシュは事情が異なる。もし、電圧安定器がなければ、短期間の内に電子機器は電圧の急激な変化や過電圧のために故障する。雷でPCが破壊される現象と同じだ。 従って、筆者は変圧器と電圧安定器が一緒になった Trans pal World 120W (BWALLOW ELECTRIC社製)を購入した。120wまで使用可能である。今回、プリンターも持参しているので、120wまで必要であったが、もし、PCとCD程度しか使わないのであれば、60ワット程度で良いかも知れない。1万3千円で購入。 <プラグ類>必需品 電源コンセントの形状、電話ジャックの形状は世界中様々である。数カ国を回る予定であれば、一つ一つ揃えると結構な金額になる。しかも、インドのような国では、電源プラグの種類は3つあって一個600円としても1800円。馬鹿にならない。それに、調べるのが大変だし買いに行くのも一苦労である。 今後、いろんな国に行く場合は、持参PCのために世界中すべての国のプラグが一つのポーチに入っている ROAD WARRIOR INTERNATIONAL "Gear for the Mobile Professional" のInternational Tele-Travel or Travel Kits がお勧め。6千円前後で売っている。これ一つ買えば後は一切悩む必要がない。 3. プロバイダ 準備で一番頭を悩ますのが、実は行き先での接続の確保だ。PCと周辺機器は言ってみれば目に見えるし、テストも出来る。また、行った先でも何とかなる。しかし、接続先となるプロバイダのアクセスポイントは予め確保しておかなければならない。もちろん、時間に余裕が在れば行った先でも何とかなるかも知れない。が、大変な苦労だ。それよりも、日本でネットに接続している内に何とかした方がいい。 まず、自分が加入しているプロバイダが、世界中にアクセスポイントを持っているかどうかを確認する。MSNやIBM、AOLであれば問題ないだろう。しかし、おそらくそれら大手でもカンボジアに接続ポイントが在るかどうかはわからない。 もっとも確実なのが、海外ローミングサービスを利用してプロバイダにアクセスすることだ。この場合、プロバイダによって異なると思うが、通常、他のプロバイダを経由して利用できないSMTPサーバー(メールの送信サーバー)も、おそらく使用可能だろう。ローミングサービス利用は普通別途申し込みが必要である。 海外ローミングサービスも利用できないプロバイダ加入者は、行き先の国がローミングサービスの対象に含まれている事を確認した上で、該当するプロバイダに加入する必要がある。 <タイの場合> タイの場合は事情が異なる。先払いの接続サービスが充実しているのだ。コンピューターショップなどに行けば、もっとも安いので接続20時間で300バーツ(1000円)。CD付で売っている。そうしたサービスを行っている会社が20社以上はある。事情に合わせて購入し、MS Outlook Express5とHotmailを併用すれば、メールアドレスの変更を通知したりする煩わしさもない。仮に、メールの送受信にローミングの接続先を利用するにしても、利用料金が個人の負担であるなら、インターネット閲覧は先払い接続サービスを利用するのが圧倒的に安上がりだ。ローミングサービスの場合、一分10円とか20円が日本での接続料金にプラスされる。 <国際電話で接続> どうせ会社が負担するのだから、国際電話で日本のプロバイダに接続しようと考えている人もいるだろう。しかし、これはお勧めできない。なぜなら、おそらくホテルからプロバイダに接続するケースが多いと思えるからだ。 街角の電話屋にPCを持ち込んで通信するのは論外である。危険きわまりない。どうしても必要な場合は仕方ないだろう。しかし、それを前提に考えて準備を怠るのは、これはもう海外に行く前から危険を招き寄せることを自覚すべきだ。そうした人は犯罪に遭いやすい。そうした人は、PCを持って行くべきではない。
<PCと犯罪> 実際の接続について述べる前に、盗難とか強盗などの犯罪について少し触れたい。 間違っても、IBMなどのロゴが入ったラップトップ用鞄にPCを入れて行かないように。飛行機の中で盗難に遭う場合もあり、実際、筆者はCanon BJC30vを機内で盗まれたことがある。幸い、その時パソコンは入れていなかったが、ラップトップ用の鞄であると分かるものは避けた方がいい。 幾重にも鍵を掛けること。窃盗は時間との勝負である。仮にホテルの部屋で泥棒に入られた場合でも、厳重に鍵を掛けていれば盗まれる確率は低くなる。鍵がかかっているから金目のものであると思われる場合もあるだろう。しかし、重要書類かも知れないし、チャックが壊れているだけなのかも知れない。通常、鞄ごと盗むことはないし、ひったくりの場合、鍵がかかっていようがいまいが関係なくひったくる。また、ホテルでロッカーなどが鍵付でなければ、鎖と錠前で厳重に鍵をする。ホテルの従業員が盗むことも考慮して、出来るだけ自前の鍵を用意しておくこと。 高級ホテルであるからと安心してはならない。高級ホテルでも従業員の給料が高いわけではないからだ。問題は、犯罪を誘発しないよう管理をしっかりとすることだ。仮に、盗まれても保険に入っていれば大した被害ではないし、後で笑い話になるかも知れない。しかし、自分の不注意が一人の人間を犯罪に招き入れ、結果、犯人とその家族の将来を台無しにすることになったとしたら、笑い事では済まない。 国際会議などで、PCを会場に持ち込んだり、PCルームで作業をするときは、必ず盗難防止用のチェーンやワイヤーを取り付ける。3000円以内で買える。これも、精神的な防御が目的だ。会議では、ちょっと席を外す時がしょっちゅうあり、いちいちその度にPCを抱えて移動するのは実際的ではない。細いワイヤーであっても、これによってその人が、PCを盗まれないよう気を配っている姿勢が伝わって効果を発揮するのだ。例え本人がいなくとも隙がなければ盗まれる確率は低い。 <接続> a. 周辺機器のところであらかた書いたが、まず、回線状況をチェックしよう。 b. ホテルなどでの内線発信の場合、以下の様に電話番号を設定する。 接続先電話番号を仮に333333とし、市内電話への外線発信を9とした場合。 9,_333333 ' _'は半角のスペース。通常、ダイヤルアップで外線発信番号を設定できるが、おそらくこの方が確実。 c. 通信環境の良いところでは一発で接続に成功するかも知れない。しかし、なかなか繋がらない場合もある。モデムの初期化に失敗している場合もあるし、様々な理由からうまくいかない時がある。そんなときは、一旦、PCの再起動するのが良い。それでも接続に失敗する場合は、ダイヤルアップ設定を確認しよう。 筆者は実に接続で苦労している。10年近くPCで通信を行っていて、インターネット歴も3年になる。ダイヤルアップの設定は何度も経験しているし、様々なトラブルも体験済みだ。それでも、失敗は避けられない。ダイアルアップ失敗の最大原因はホテルの配線状態や外部との交換機の問題など様々に考えられる。一度泊まったホテルでは、電話線を途中で継ぎ足していたが、コードはむき出しで、どう見てもホテルの人が自分でつなげただけ。それが、その部屋だけでなくホテル全体の配線がそうなのだから、上手く行くはずがない。 <カプラー使用時> 回線端末がジャック式でない場合、カプラーを使うことになる。事情は同じで、カプラーから接続発信する。しかし、じつはそうしたホテルの殆どはオペレーター経由で外部とつなげる古い交換機を使用している。この場合、ホテルの部屋からの接続は絶望的。 <LAN> 最近では国際会議でも予めLANが引かれてインターネットに高速に接続できるよう準備されている事が増えてきたと聞く。また、出張先の会社にLANが在ったりする。これまでは触れなかったが、LANカードも一応用意していった方がいいだろう。ついでに、日本語OSのPCも用意すればいいのにとか思うがそこまでは望めない。LANカードは安い。モデム兼用のカードでも安いのだと1万数千円で買える。政府や国際機関の主催する会議に出席する場合は、予め、どのような環境なのか確認するようにしたい。 また、ISDNカードも一応用意していった方が良いだろう。インターネット・カフェでも電話回線とプロバイダ接続を使わせて貰えることがある。しかし、大体がISDN回線を使っていたり専用線だったりする。実際に使えるかどうかはともかく、一応ISDNカードも必需品である。 <保険> どんなに注意しても盗まれることはある。そこで重要なのが、保険だ。海外旅行保険に加入すれば、通常最低40万円の携行品の盗難保証が付く。補償金は増額できるが、保険でもっとも高いのが携行品なので、その分を覚悟すること。 クレジットカードに海外旅行傷害保険が付属している場合、携行品の盗難保証があるかどうかチェックすること。年会費一万円程度だと付いているとも思えないが。そして、ついでにその他の補償額もチェックする。 <バックアップ> バックアップを取っておくことは重要だが、バックアップしたMDやフロッピー自体も紛失したり盗まれることがある。飛行機を利用しているとスーツケースが行方不明になることは稀ではなく、こうしたケースも考え合わせると、何がもっとも重要な情報であるのかをよく考えて保存方法を検討したい。 例えば、あなたが作家や学者で、小説や論文を旅先で執筆しているとしよう。ある日、事故や盗難で何もかもなくしたとする。このことを考えると、ノートや原稿用紙でも同じだ。しかし、ただ一つ確実な保存方法がある。それは、プロバイダもしくは無料メールサービスのサーバーに保存することだ。 それは、プロバイダのホームページのスペースにFTPソフトを使って保存したいファイルをアップロードする。最低でも5メガバイトは利用できるので、テキストでアップするのならスペースを使い果たすことはないだろう。ただ、海外などのプロバイダを経由した場合、FTPに接続できないように設定しているプロバイダもある。ローミングサービスの場合はどうなのか、予め調べておこう。 加入プロバイダがロボット型検索を受け入れている場合、それらの文書が簡単に他人に見られる恐れもある。その場合、ファイルをHTML形式にして、Head のMETAタグでロボットを受け入れないよう設定できる。 また、バックアップにFTPを使う自信のない人は保存専用のメールアドレスを作ってそこを保存先にするのもいい。むしろバイナリーファイルを問題なく保存できる分だけFTPでバックアップを取るより楽だ。とにかく、時間がある時に、こまめに重要な連絡先のアドレスを登録しておくことをお勧めする。 以上書いたことは、本人が生きていればの話。亡くなった後、小説や論文、現地レポートなどが遺作として発表されることを念頭に置いている人もいるだろう。その場合は、肌身離さず遺書を身につけ、その遺書にアドレスなどを記載しておけば、便利である。特に戦争ジャーナリストやフォトジャーナリストにはお薦め。
<終わりに> これを読んでお気づきでしょうが、海外モバイルは出来れば避けたいものです。盗まれないよういつも気を使わなければなりませんし、それに重くて移動にも苦労します。どうしても必要な人は、相当の準備をする必要があります。そして、盗難、行方不明、破損など、事故後の事を念頭に置き適切な対策を採っておくことが、結果的に盗難などの事故の防止にも反映されると考えます。 私たちは、自分の損害、自分の所属団体の損害のみを考えていてはいけません。自分の不注意が、一つの家族を破滅に導くことも十分に考慮して、盗もうという気を起こさせないよう配慮すべきです。 なお、本文中に出てくる固有名詞で不明な点はご自身でお調べいただくようお願いします。そのために、当ホームページにのリンク集にはインターネット関連のリンクもいくつか掲載しています。Hotmailについてはマイクロソフトのホームページか、http://www.hotmail.comにアクセスして下さい。 おしまい
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