バングラデシュ人民共和国
シェイク・ハシナ首相殿
CHT和平協定と1998年改正ランガマティ丘陵県評議会法との間の矛盾点に関する緊急請願
拝啓
バングラデシュ・チッタゴン丘陵地帯での二十年以上にわたる内戦を終わらせた、昨年のPCJSSとの歴史的な和平協定調印を歓迎いたします。野党からの妨害や長い交渉過程にも関わらず状況を打開するには、多大な労力と決意を要したものと理解します。この協定がCHTでの恒久的な和平、正義、繁栄の基盤となり、しいてはバングラデシュ全体の発展に寄与することを切望いたします。
協定が目的を達成するためには、その全ての規定が完全に滞りなく実施されることが必須です。この点で、和平協定の規定を発効させるために今年5月に制定された法律の一つ、1998年改正ランガマティ丘陵県評議会法に、和平協定の内容と大きく矛盾する点がいくつかあることを知り、大変憂慮しています。
特に、和平協定(B節3条)では「非先住民族の永住者」を「丘陵県に合法的に土地を所有しており、かつ丘陵県の一定の住所に一般に居住する」非先住民族と定義しているが、改正された法律では「丘陵県に合法的に土地を所有しているか、もしくは丘陵県の一定の住所に一般に居住する」非先住民族と定義しています。これでは、丘陵県に土地を合法的に所有していない入植者も丘陵県評議会選挙での投票権を認められ、丘陵地帯での居住を正当化されることになります。
PCJSS及びジュマ民族社会は、和平協定の精神と相反するこれらの矛盾点を取り除くよう、再三、強く要求して来ました。同法律の制定直後、政府はPCJSS首脳に、予算が審議される国会の次期会期に、矛盾点を取り除くための法改正を行うと約束し、それが実現しなかった後も、11月5日からの会期中に改正を行うと再度約束しておられます。
政府が和平の過程に誠意をもってコミットしておられることを明確に示すためにも、今国会会期中に、和平協定との矛盾点を全て取り除くため、この法律を改正するよう要請いたします。これは、協定への支持を強め、CHTに協力的な、調和した雰囲気を作ることにもつながるでしょう。
敬具
Japan Committee on CHT Issues
Yoshihiko Murata
(賛同団体・個人の氏名は略します)
<背景説明 賛同を募るにあたってE-MAILで配布した文書 1998年11月>
「昨年12月2日、チッタゴン丘陵地帯の先住民族であるジュマ民族を代表するPCJSS(民族統一党)とバングラデシュ政府の間で和平協定が結ばれ、二十年以上続いたシャンティ・バヒニ(先住民族の武装組織)と政府軍の間の戦いが終結した。
和平協定では、一般行政、治安維持、開発に関する事項を監督・調整する地域評議会(Regional Council)という、先住民族を中心とする新しい自治組織が作られることになり、従来の県評議会も権限が強化されるなど、先住民族の一定の自治権が認められたほか、先住民族を大臣とするCHT省という新しい省庁が作られた。
入植者による先住民族の土地収奪問題の解決を図るために土地委員会が設けられ、CHTに点在する治安軍の一時的なキャンプがCHT内の六つの兵営に段階的に撤収されることになった。また、インド・トリプラ州に長年亡命していた約6万人のジュマ難民の本国帰還と生活復興、PCJSSメンバーの全面恩赦と生活建て直しのための支援が約束された。
PCJSSの当初の要求(立法府を有する州としての自治権、国境保安軍以外の全ての治安軍及びベンガル人入植者の撤退、ジュマ民族の権利に関する憲法上の規定など)には、及ばないものの、正しく実施されれば、一定程度ジュマ民族の権利を回復し、新規入植などの脅威に歯止めをかける内容となっている。
その後、今年2月に難民送還が終了し、シャンティ・バヒニも武装放棄した。
5月に県評議会を強化して地域評議会を新設するための4法案がバングラデシュ国会に提出された。しかし、4法案は、和平協定と矛盾する条項やその意味を歪曲する表現がいくつも盛り込まれ、ジュマ社会から強い反発をかった。抗議の甲斐あって地域評議会法と2つの県評議会法は和平協定に準じたものに直され、国会で可決されたが、ランガマティ県の評議会に関する法案は、ベンガル人入植者の評議会選挙での投票権を認めてその居住を正当化する条項が盛り込まれたまま、可決されてしまった。
PCJSSやジュマ社会の再三の訴えに対し、政府は協定に準じた法改正を前回の国会会期でを行うと約束したが、実施されなかった。「海外から法改正を求める声を政府にとどけてほしい」とのPCJSSからの要請で、今回のアピールを行うことになった。」
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